I 混声合唱組曲 光る砂漠 混声合唱組曲「光る砂漠」は、矢澤宰の遺稿詩集「光る砂漠」を中心に、彼の500余篇の詩をもとに作曲された。昭和19年中国大陸で生まれた矢澤氏は、8歳で腎結核に侵され、「死んだらいいということしか頭になかった」と記しているほどの苦悩の中、14歳から作詩に熱中した。彼の詩は、生と死のジレンマの中から培われた鋭敏な感性によって生み出された「なつかしさ」を感じさせる。 死と直面した入院生活の中、ある牧師により聖書に親しむ契機を与えられ、想いを寄せていた看護の女性に聖母マリーアの像を重ね合わせたことを象徴し、有名なアルカデルトのアヴェ・マリアの最初の音型を背後から読んだモチーフが、全曲を通じ使われている。